ユジーヌの死にざまあれこれ

 本編「魔の島のシニフィエ」よりもかなり早くに書き上げていたのが、番外編の「意志を持つ力」でした。「シニフィエ」はこの話の続きにあたるので、構想の初期段階から「ガルトが島に戻ってユジーヌと対決して勝利」という話にすることを決めていました。
 が、ここで問題になったのは、ユジーヌがどうやったら負けてくれるだろうか、ということ。なまじ頭のいいキャラにしてしまった上に権力持ってるものだから、反乱組織の動きなどあっさりと読めるだろうし、止めようと思えばいくらでも止められるはず。
 逆にガルトにしても、ただユジーヌを殺すというだけなら、いくらでもできるわけです。歩く即死魔法な上に、姿を消してどこにでも入り込める使い魔だっているんだし。
 互いの思惑があって、最後の最後に一度だけ会ってネタバラシ、ということにして、さてどこでどんな風に会ってどう決着をつけるか。かなり迷いまくったところです。
 さらにもう一つ迷ったのが、ユジーヌの死に方。ユジーヌ自身が死を選ぶかどうかというところですね。
 というわけで、没になった展開をご紹介しましょう。

■封鎖されたゲインでガルトを待つユジーヌ。傍らに控える少女は、ユジーヌが見つけだした、ガルトと同様に「ウドゥルグ」の力と結び付けられた存在。名を「エリア」という。現われたガルトに、少女の力で破壊を起こされたくなければ一緒に来いというユジーヌ。ガルトはそれを拒否してユジーヌを殺す。
  …少女「エリア」は自分が思いついたとはいえ、あまりにひどい設定だと思った。ガルトの殺された妹の名を(たぶんユジーヌが)嫌味のようにつけたということも、人には過ぎる力を使うことを少女(7歳ぐらい)に強制し、少女の寿命を縮めてしまったということも。それが物語の重要なファクターになるならともかく。だもんで、なかったことに。

■島を脱出し、ケレスに向かうユジーヌ。ディングの名前でガルトが翻訳した「記号魔法」を片手にガルトを待つ。島が落ち着いたのを見計らってガルトは自分にとっての最後の決着をつけるためにケレスへ。革命への過程で仕組まれてきた互いの策略が明かされ、さらに、島から脱出して戻ってくるまでのガルトの空白期間も明らかに。が、自分はそれでも人間なのだと言い放つガルトに、ユジーヌは敗北を悟り、自害。
 …物語内時間があまりに経過してしまって、デューイ視点の本編に組み込めそうになかったので没に。

 結局この2つの結末をミックスした形になったわけですね。

 キャラを作り込んでいくほどにユジーヌは、どんどん扱いにくいキャラになっていきました。
 なにしろ
・権力や所有への欲望とか支配欲
・自分の生に対する執着や、死への恐怖
・なにかに対する憎しみや敵対心
 こういった、通常の悪役の原動力になりそうなものが、ユジーヌというキャラには似合わなくなっていってしまったので、何を目的に行動させたらいいか、どうしたら彼は自分が「負けた」と思うのか、ひどく難しかったです。

 難しいのに…こういうタイプのキャラを描いてしまうのは、もしかして癖なのかも知れません。現在進行中の作品にも、ユジーヌ系のキャラがいたりします。誰なのかは内緒だけど。