魔法のはなし

 記号魔法の元ネタはゲームでした。「ダンジョン・マスター」というRPGなんですが、いくつかの「シンボル」を組み合わせるもので、きまった組み合わせで一定の効果がある、という魔法。シンボルを選ぶとMPを消費するんですが、時間が経つとMPは回復するんで、シンボルの組み合わせをあらかじめ作っておいて、突然敵が出てきた時に使えるようにしておけるのが便利でした。
 この「シンボル」が、果たして描いているのか声に出しているのかは定かではありませんが、普通伝わっていない一風変わった魔法にするために(あと、詠唱の文句を考えるのが面倒だったし)、記号を描くということにしました。こうしておけばルーンみたいにものに刻んで使うこともできるし、暗殺者向けだろうし。

 作品中で具体的なシンボルの組み合わせについてはほとんど触れていないのですが、
  ・魔法の方向を決める「ディレクション」
  ・威力を決める「パワー」
  ・性質を決める「エレメント」
  エレメント・シンボルの動きを決める「コマンド」
といった分類があります。あと、隠しシンボルとして、
  ・摂理に関する「ロー」(ウドゥルグはこの一種)
  ・ロー・シンボルの逆行を指定するシンボル
   (命名されていない。屍鬼をつくる時に使うシンボル)
があります。「ロー・シンボル」は三次元(奥行きがある)で、非常に難易度の高いシンボルになっています。

 ファンタジーにおける「魔法」ってなんなんだろう、と、時々思います。ファンタジーに許されたお約束の力、としてしまってもいいのだろうけれど、もう少し突っ込んで、そのお約束がなぜ成り立つのか、ということを考えていく。そうすると「この呪文でなんでこんな効果があるの」→「この呪文はいったいどういう意味なの」という問いに行き着いてしまうんです。
 「言霊」とか「真の言葉」とかで満足していられた時もあったんですが、記号論をやっていると、「真の言葉」という表現自体が虚しく思えてしまうこともあります。あらゆる社会で何かの本質を言い表わすことのできる「真の名」が存在する…それは魅惑的ではあるけれど、結局どこかで受け入れられない自分がいます。
 だからたぶん、自分で自分にとっての解を見つけなきゃならないんだと思います。「シニフィエ」はその一端なんだろう、とかね。