魔の島のシニフィエ 用語集

ちなみに、茶色の見出し語は本編には出て来ません。 一部は番外編(「交差の地」含む)に出てくるものも。


アズレン(地名)
シガメルデ近郊の小さな村。デスフォレストに隣接していた。シガメルデ壊滅事件により壊滅、以後は廃墟のみが残る。

アリス・デルガスルーア
(人名)
ドリュキスの金物屋の娘。「ランクス」のメンバー。

暗黒魔法
ロルンの魔術師が使う、暗殺のための魔法。詠唱が必要ないため、音をほとんど立てずに暗殺することができる。記号魔法の中から、暗殺に有効なものだけをロルンで教えているのだが、島内では一般に「暗黒魔法」と呼ばれている。→記号魔法、→ロルン

生贄
破壊神ウドゥルグの封印を解くためにはより多くの血が必要だという伝承から、毎日レブリム、ドリュキス、ゲイン(壊滅前はシガメルデも)といった都市で行なわれる礼拝では、破壊神像の前で動物の首を切断するやり方で生贄が捧げられる。通常は生贄用に飼育または捕獲された動物が用いられるが、月に一度の「例祭」と、年に一度の「大祭」では、くじで選ばれた庶民の5歳未満の子どもが生贄にされる。

イーシュ
(人名)
ガルトの使い魔と名乗る、銀髪の美少女。翼のある巨大な蛇に変化することもできる。はっきりものを言う。

ヴァリエスティン
記号魔法における三種類の「摂理のシンボル」の一つ。「選択の非可逆性」を表わす。通常、一度した選択は取り消すことができず、人や動物をはじめとしたあらゆる存在のさまざまな選択によって運命が織り合わされていくことから「運命」に関するシンボルと言われている。このシンボルを用いた魔法には相手の判断を誤らせたり、過去や未来を見たりするものがある。このシンボルを研究していた魔術師達が後にヴァリエスティンを「運命の女神」として神格化し、大陸北部、エテルナ公国に神殿を建てたが、最近内乱によって壊滅した。→シェイラ・ディアレスタ

ウドゥルグ
記号魔法における三種類の「摂理のシンボル」の一つ。生命の流れを表わす。要するに「生きてるものは死ぬし、死んだら生き返らない」ということ。このシンボルを用いた魔法には傷の治療や悪霊の浄化、寿命の操作や屍鬼の製造といったものがある。→破壊神ウドゥルグ

エア・ストーン
異世界の鉱物状の半生命体。特定のコードを与えることによってあらゆるエネルギーを吸収したり、形状や性質を変えたりすることができる。ガルトの右耳のピアスがこの石らしいとか、いずれランディの宝玉になるとか、ラドアがこの石をリートから入手したとか、そんな話まで書けるわけはないのだが、一応設定のひとつなので、ここに書いておく。(一部「交差の地」で公開)

エリア・ラディルン
(人名)
675年、アズレン生まれ。ガルトの妹。シガメルデ壊滅事件の折に死亡したと見られる。

ガルト・ラディルン
(人名)
671年11月、アズレン生まれ。ヘスクイル島の旧教団で暗殺者として育てられ、後に脱走したらしい。記録は散逸しているが、革命にあたってデューイに協力したことが知られている。革命後の記録はない。デューイやランディ、ユジーヌら革命における重要人物がそれぞれガルトにこだわりを見せていることから、ヘスクイル革命の陰の立役者だったことがうかがわれる。一説には、ディング・ウィルビアーは彼のペンネームだったとも言われる。革命当時の年齢:24歳。

記号魔法
ヘスクイル島で暗殺者が用いる魔法。特定の意味を持つ記号<シンボル>を宙に描いたり刻み込んだりすることで、対象に働きかける力を得る。もとは大陸北部で発達した魔法体系であり、ヘスクイル島の住人はその分派の末裔。

教団
ここでは「ヘスクイル教団」すなわち、破壊神ウドゥルグを信仰する集団を指す。ヘスクイル島内で支配権を握り、税や取引、教育など、日常のあらゆる制度において優遇されている。また、教団の構成員の家族は生贄の対象からも外されている。教団員でない「庶民」が約8万人に対して、教団員は1500人程度と、数の上では2%程度ではあるが、長年の破壊神信仰と「ロルン」による粛清の恐怖によって、696年まで反乱が起きたことはなかった。

黒猫亭
ドリュキスの港近くにある酒場。行商人や船員のたまり場となっている。→ゲイリー・クランジェ

ケレス
(地名)
島外、大陸北東部の島。レーギス帝国の都市。航路の要所であり、古くから賑わっている港町。

ゲイン
(地名)
ヘスクイル島北西部の都市。もっとも厳しい気候のため、人口は少ないが、シガメルデ壊滅以降は西部唯一の都市としてなくてはならない存在になっている。山の鉱物資源の採掘が主産業。かつてはシガメルデを経由する街道しかなかったが、シガメルデ壊滅後に、森林を抜けるレブリムとの直通ルートが開通したため、レブリムからは馬で一日ほどで行き来ができる。

ゲイリー・クランジェ(人名)
「黒猫亭」の主人。陰で「渡し屋」を営む、ランクスのメンバー。→黒猫亭

シェイラ・ディアレスタ(人名)
大陸北部、エテルナ公国にあった、ヴァリエスティン神殿の巫女。運命を見る力を持ち、国の内乱を予言したが、神殿はその内乱に巻き込まれて焼け落ち、シェイラも行方不明となる。→ヴァリエスティン

シガメルデ
(地名)
ヘスクイル島南西部の都市で、島南部を東西に走る街道の起点。森林から伐採した木材資源が豊富で、美しい木造建築が有名であった。687年の謎の壊滅事件により、以後廃墟となる。→シガメルデ壊滅事件

シガメルデ壊滅事件
687年6月の正午、シガメルデと周辺の村(ロヴァイユ、マルシュピール、アズレン)一帯の生命が瞬時にして死滅した事件。人間の犠牲者は1万人近くにのぼると見られる。人間や動物はおろか、植物や地中の微細な生物までもが全滅し、その後長い間、生命の育たない死の領域と化した。上級司祭に被害者がいなかったという理由で教団が調査命令を出していないため、原因は一切不明。

屍鬼
死者が記号魔法によって蘇った状態。いわゆるゾンビ。この魔法は破壊神ウドゥルグを表わすシンボルを用いるため、ウドゥルグの加護がなければ成功させることができないと言われる、難易度の高い魔法である。解除の魔法によってしか倒すことはできない。革命の数年前からは、ロルンの暗殺者には死ぬと同時に屍鬼化の魔法が発動するようなしかけが施されるようになった。

司祭
教団の信徒集団の中で高位に位置する役職。教皇を頂点に、9人の上級司祭、20〜25人の中級司祭、50人程度の下級司祭が各都市に配属されている。信徒の中でも上流の家庭に生まれ、司祭学校で優秀な成績をおさめた者だけが司祭になることができる。また、司祭は階級ごとに色分けされた仮面をかぶり、決して素顔は見せない。

死神の額飾り
レブリムの大聖堂に安置されているウドゥルグ像の額に飾られている、翼のある蛇をかたどった銀細工。触れた者の寿命を奪い取ると言われている。数十年に一度、紛失することがある。革命当時も行方不明であったが、後に道具屋ラドアの手によって、デューイの手に返還される。

ジュール・デルガスルーア
(人名)
ドリュキスの金物屋の主人。反乱組織「ランクス」を結成した人物。

信徒
特定の階級に属さない教団の構成員。島全体で1000人程度と言われる。信徒の家庭に生まれるか、司祭の推薦を受け、多額の寄付金を納めるかした者だけが信徒となる。

ティア・ルクシア(人名)
レブリム出身のロルンの暗殺者。デューイとは同時期に訓練を受けていた。島外、リュテラシオン支部に在籍し、革命の1年ほど前にレブリム支部に召還され、ユジーヌ司祭長直属となった。

ディング・ウィルビアー(人名)
ケレスに住んでいたと思われる人物。破壊神信仰以前の記号魔法の書物を解読し、公用語に翻訳した。この翻訳書「記号魔法」は、魔術研究者達に注目され、大陸で発行されている、魔法学と神話学に関する学術雑誌「神話研究」に書評が掲載されている。

デスフォレスト
(地名)
島の中央部に東西に伸びる森。野生の獣や妖魔が多く、屍鬼も徘徊しているところからこの名がついているが、同時に豊かな森林資源を提供している地でもある。

ドリュキス
(地名)
ヘスクイル島南東部の都市。島唯一の港町で、商人の自治がある程度許されているために、教団に反抗する者達の組織が地下にある。また、住人をひそかに島外に逃がす「渡し屋」がいると言われる。

破壊神ウドゥルグ
死人の世界「死界」の王と言われる、死と破壊とを司る神。長く黒い髪に軽装鎧とマントをつけ、額に第三の眼を持つ青年の姿をしている。
人は死ぬと死界に入り、ウドゥルグの支配を受ける。かつてウドゥルグは地上をも支配していたが、死界へと封印された。封印を解くためには多くの血が必要であり、血を流すために尽力した者は、封印が解けて地上がすべて死界と化したあかつきには、ウドゥルグの加護を得て死を超越した存在になるという。

バルベクト・ユジーヌ
(人名)
648年生まれ。下級司祭の家に生まれ、司祭学校でトップクラスの成績を誇り、以後もエリート司祭としての道を歩む。691年、史上最年少の司祭長に就任。司教の補佐を勤める一方で、ロルンの統括や屍鬼部隊の整備を行なう。また、「ウドゥルグ」の力に関心を抱き、兵器としての利用を企てる。696年、革命時に死亡したとされる。

ハル・ロンバート
(人名)
680年代に主にレブリム周辺で活躍していた占い師。外れたことはないという評判を取っていたが、デューイを占った時にその結果に恐れをなし、現役を引退。以後はゲイン近くの小さな村でつつましく暮らしたという。

フィリップ・ホーリー
(人名)
通称フィル。679年生まれ。ドリュキス出身でアリスの幼馴染みだったが、5歳でロルンに入れられる。教団の思想になじまず処刑されかけたところをガルトに助けられ、「ランクス」の実行部隊として活躍する。

ヘスクイル革命
696年8月、教団の圧政に反抗した民衆が武力蜂起し、教皇を殺害、司祭達を拘束した事件。698年に革命派によってヘスクイル教国が樹立され、破壊神信仰の撤廃と民主的な政治、そして他国との平和的共存を目指すようになる。→ラスデリオン・デューイ・バートレット

ヘスクイル島
(地名)
大陸のはるか北方にある島。魔の眠る伝承の島「ダーク・ヘヴン」であると言われ、現在では眠る魔とは「破壊神ウドゥルグ」のことだとされている。革命前は他国と公式には国交を持たなかったものの、世界各地に連絡員がおり、暗殺を請け負っていた。また、国名を明らかにしないことを利用して密貿易の仲介や、身もとを偽った覆面商人による交易も行なわれていた。内部の様子はほとんど知られておらず、不気味な噂だけが一人歩きしている謎の島。ただし、革命後は徐々に他国との交流を始めている。
人口8万人強。国土の大半は高山と氷河、それに森林に覆われているため、居住可能地域は南部から西部にかけての沿岸に限られる。

ラスデリオン・デューイ・バートレット(人名)
677年生まれ。通称「デューイ」。ヘスクイル革命の中心人物で、革命後ヘスクイル教国の初代最高司祭となる。幼い頃「ウドゥルグに救われて歴史に名を残す」と予言されたことがきっかけで暗殺組織に入れられ、暗殺者となるが、信仰を受け入れず、処刑されかけたところをガルトに助けられ、ランクスに加わる。
かつて破壊神として恐れられていた「ウドゥルグ」の「生命神としての真の姿」を強調し、生命を尊重して摂理を歪める欲望を抑制することの重要性を説き続けた。その教えは現在でもヘスクイル教国の基本理念となっている。革命当時の年齢:19歳。

ラドア
(人名)
大陸北部の港町、ケレスに住む道具屋。長い黒髪に黒衣の美しい人物だが、性別や年齢、表情は人によってそれぞれ違ったふうに見える。どのような道具でも入手することができ、また、左手で触れたものの過去を、右手で触れたものの未来を読むことができる。出身や本名などはすべて謎に包まれた存在だが、ガルトとは仲がよいらしい。

ランクス(組織名)
ドリュキスの商人達を中心に結成された反乱組織。初代リーダーはジュール・デルガスルーア。デューイがリーダーを引き継ぎ、革命の中心的存在となる。

ランディ・フィルクス・エ・ノルージ
(人名)
ヘスクイル革命でデューイらに協力した青年。大陸東方の小国「ケイディア」の”魔剣を守護する一族”の出身。魔剣はつかの宝玉に悪霊を封じ、その力を剣に宿すことで力を発揮する。ヘスクイル島へ来たのは、一族を滅ぼした兄に復讐するために、より強い悪霊を求めてのことらしいが、それ以前からガルトとは知り合いだった。革命後は島を去り、しばらくケレス島に留まった後、故郷に戻る。革命当時の年齢:27歳。

リュテラシオン
(地名)
大陸北部、レーギス帝国の都市。ヘスクイル島からは真南、船で20日ほどの位置にあり、教団の拠点があったと言われる。革命の頃には教団の島外進出計画の足場として暗殺者達が集結していた。ケレスからは船で3日ほどの距離。

レブリム
(地名)
ヘスクイル島南部の都市で、首都となっている。中心部に位置する聖堂には、司教や上級司祭の住む教団の本部、膨大な資料(しかし、大部分は非公開)をおさめた図書館がある。

ロルン(組織名)
教団の信徒集団の中で最下層に属する組織。庶民の子どもを集めて暗殺者としての教育を施し、破壊神のために血を流すことが最高の徳だという思想を植えつけられて、反乱分子や島外で依頼された標的を暗殺する。自然死に見せかける毒薬や、声をほとんど出さずに発動できる魔法などを操る者が多く、その暗殺技術は世界でも最高の水準にあると噂される。ロルンでは庶民の子どもを5歳から教育し、通常は15歳で暗殺者として一人前であると認定し、身体のどこかに髑髏の刺青を施す。毎年全島から100人ほどの子どもが集められるが、毒薬の調合や思想規律違反による処刑などで、一人前になるまで生き残るのは毎年20人に満たない。また、生き残っても長年接してきた毒薬の作用などにより、ほとんどは30代に達しないうちに生涯を終える。その人数は300人程度であるが、庶民にとっては恐怖の代名詞でもある。
ロルンの家族は「準信徒」とされ、信徒に準ずる待遇が保証される。そのため、自分の子どもをロルンに差し出す庶民が後を絶たない。


03/07/15