水の追憶・序


「ごらん、サーレント」

 言霊師の指は、眼前にそびえ立つ山を指す。言霊師に連れられた少年は、言霊師の指をたどるように視線を移動させた。山の頂上からうっすらと立ち昇る煙のところで、その視線が止まる。

「火山を見るのは初めてか?」

 煙から目を離さぬまま、少年はうなずく。

「山を登れば、もっと珍しいものがあるぞ。マグマの池や、溶岩の洞窟、それに、火山にしか見られない生物もな」

 少年は言霊師の言葉に目を輝かせた。言霊師の服の裾をひっぱり、早く行こうというようにせきたてている。

「はは…おまえも好奇心旺盛だな」

 言霊師は少年の頭をなで、歩き出した。

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